ワイン専門店マスキュー
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ドメーヌ・バサック 桝久的考察

ドメーヌ・ブロカールのステファン・ブロカール氏と岡本独来たよ来たよ、来ましたよ!
ドメーヌ・バサックの9代目 ルイさんがマスキューに来ました(笑)!

ルイさん「こんにちは!」私「ハロー!日本語上手ですね(笑)。通訳いらないかな(笑)!」
ルイさん「妻が日本人なので、ちょっとね(笑)。」
私「ところで、ルイさん1989年生まれだとか?」
ルイさん「1988年です。」
私・家内「うちの娘と同じ歳です。ちなみにお父さんはおいくつですか?」
ルイさん「父は数年前に亡くなりました。そのため家業に専念することにしました。えーと、生きていれば58才かな。」
私「私に近い(笑)!こりゃ、大きな息子だ(笑)!」
ルイさん「日本でワインバーをやるつもりで準備していたんですが、父の死でフランスのワイナリーに戻ることにしました。私自身、幼い頃からずっとワイン造りに親しんできたことを捨てることができませんでした。ワイン造りが私のアイデンティティーだと気がつきました。」
ルイさん「お嬢さんは家業を継ぐのですか?」
私・家内「いえいえ。だいぶお酒には親しんでいるようですが(笑)、自営業は嫌なようですよ。嘆かわしい(笑)!」

まずはドメーヌの歴史と現在
ルイさん「私で9代目 200年くらい続いています。」
私「もともとはヴィニロン?」
ルイさん「はい。父がそれを会社の形をとったワイナリーにしました。」
ルイさん「あと、化学薬品などを極力使わない栽培醸造を提唱しました。当事は皆関心が薄く、初めてモンペリエで開催したオーガニックワインフェスティバルに参加したのは10人くらいでした(笑)。今では1000人以上の生産者が参加する大イベントになりました(笑)。」
家内「先覚者だったんですね。」
ルイさん「オーガニックをうたい文句にするのは嫌なのですが…。」
私「インチキなオーガニックワインって多いですもんね(笑)。」
ルイさん「はい(笑)。美味しいワインを造るには自然とオーガニックになると考えるべきです。」
私「ところで、まだ150年前の木樽があるとか?使っているんですか(笑)?」
ルイさん「はい。さすがに木の風味はしませんが(笑)、醸造・熟成と現役です。木ですから、乾燥させると壊れます(笑)。ですから中を良く洗います。樽の入口が小さいため、父はお腹が出ていたので(笑)、小さい私の仕事でした。小形の斧で内側を叩き付着物を落とします。樽内部は150年間に渡って叩かれた跡がありますよ(笑)。当時は嫌でしたけど(笑)。」
私「まさか今はその樽だけでやっている訳じゃありませんよね(笑)。」
ルイさん「(笑)もちろん。白ワインはグラスファイバーコーティングした温度管理の出来るタンクを使い、赤ワインはコンクリートタンクを使います。」
家内「熟成は?」
ルイさん「ワインをニュートラルにするため、それを使います。余分な影響は与えたくありません。」
家内「『ジュテーム』は木樽を使っていますが、樽香がでしゃばらなくて良いですよね。新樽100%とは思えません。」
ルイさん「『ジュテーム』はバリックで1/3は新樽、1/3は一年樽、1/3は二年樽です。」
家内「なるほど、考えてますね。」
ルイさん「まだ試行錯誤なんです(笑)。」
家内「でも『ジュテーム』のアッサンブラージュは見事!素晴らしいですよ。」
ルイさん「ありがとうございます。実はワインをブレンドする時は朝の3時に起きて作業をします。」
一同ビックリ「えー、さ 三時ですか!?」
ルイさん「はい。明け方の3時なんてもっともワインを飲まない時間です。(そりゃそーだ)でもその時間に美味しく感じるブレンドが出来れば出来たワインは最高に美味しいはずです。」
日本人にはない発想に驚かされました!日本人だと一番頭が冴えた時に大事な作業をするものですが…(笑)。ルイさん何時寝てるのかな?
私「あと、バリックよりもう少し容量の大きなクロアチアのスラヴォニアオークの樽なんか使ったら更に良いかもしれませんよ。」

家内「ところで今、ワイナリーの大きさはどのくらいですか?」
ルイさん「約100ヘクタールです。」
家内・私「立派な大きさですね!何人で運営しているのですか?」
ルイさん「私を含めて11名です。」
家内・私「凄い効率ですね!」
ルイさん「スタッフは全員同じくらいの歳で、幼馴染み(笑)。作業も熟知してますから、余計な心配はしなくてしなくて良いから楽ですよ(笑)。」
私「収穫は機械ですね?」
ルイさん「はい。手で摘むより速いので、葡萄果に余分なストレスを与えないですみます。」
家内「そうなんですよね。手摘みが良い訳じゃありませんよね。良いタイミングで一度に収穫した方が良いワインが出来ますよね。」
ルイさん「私のドメーヌは近所ののドメーヌと比べて収穫が2週間ほど遅いのです。完全に糖度が目標に達してから、収穫をするようにしています。」
家内・私「なるほど!それが可能なのは機械収穫だからこそ。」

さて、こだわりのワイン造りです。ティスティングしながら話してくれました。
まずは白のソーヴィニヨン・ブラン。
家内「あー。きれいなソーヴィニヨン・ブランですね。雑味がなくてエレガント!」
私「桃みたいなニュアンスもある。広がり、後口も綺麗。こんなエレガントなソーヴィニヨン・ブランは初めてです。ところでマロラクティック醗酵はしていないようですね。管理温度はどのくらいですか?」
ルイさん「はい。アルコール醗酵は31〜35℃で、熟成温度は10℃くらいにしています。」
家内「サルファは何時どのくらいいれますか?」
ルイさん「瓶詰め時に100ミリです。」
家内「少しでも入れてくれて良かった(笑)。全く入れないど売り物にならないんですよね。」
私「すごくクリアなんですが、プレスはどのようにしてますか?」
ルイさん「(嬉しそうに)ゆっくりゆっくりします。」
私「歩留まりも低そうですよね。何%くらいの果汁を絞りますか?」
ルイさん「最終的には20%くらいは絞りません(胸を張って)。」
私「フリーランだけでつくったようなクリアネスがありますよね(笑)。」
頃合いを見図り嫌な質問をしちゃいました(笑)。
私「畑でボルドー液は使いますよね?」
ルイさん「はい。雨が降った直後に手早く散布します。」
インポーターさん「乾く前ですか?」
ルイさん「乾いた後では遅すぎます。ましてや病気が発生してからでは駄目です。薬剤の分量を極力減らすには雨上がりに少しだけで十分なのです。でも、何時雨が降るか正確に解りませんから、畑から目を離せません(笑)。」
一同「知らなかった!」

続いてメルロとカベルネ・ソーヴィニヨンを試飲。
家内「南フランスらしからぬ品の良さがある(笑)。すべてが程よいとでも言えば良いのかな。」
私「無理がないんだよね。補糖もしてないな。ミクロ・オキシダシオンをしたような感じもしない。」
ルイさん「余計なテクノロジーは使いません(きっぱりと)!過剰な抽出や、アルコール分を無理に高くすると本来の美味しいワインにはなりません。」
家内・私「拍手」
家内「ところで、『ジュテーム』ですが、カベルネ・フランが素晴らしい!明るさと広がりがとても良い!斬新!」
私「素晴らしい着想と出来上がりですよね。赤い果実味が明瞭なんですよ。」
二人の誉め殺しにあいルイさんも大喜び(笑)。
ルイさん「ありがとうございます。最初カベルネ・フランを使いだした頃、近所の人達に笑われました(笑)。上手く行くはずがないと。たしかにカベルネ・フランは普通に扱うと特徴がでません。醸造の工程でジュースの扱いを丁寧にゆっくりゆっくりしないと、青臭いえぐみが出てしまいます。」
私「へぇー。ポンピングオーバーも移動もゆっくりということですか?」
ルイさん「はい。他の品種と同じようには扱えません。」
家内「南フランスでカベルネ・フランを成功させたのはあなたが初めてじゃないですか?」
ルイさん「(謙虚に)そうですか。」
私「南フランスでカベルネ系の葡萄を栽培するとあまりに乾燥しているため、灌漑が必要と聞きますが どうでしょう?」
ルイさん「たしかにある程度の灌漑は必要になります。ただし基本収穫量を1ヘクタールあたり35ヘクトリットリに抑えるように仲間同士で取り決めています。際限なく灌漑をしてしまうと80ヘクトリットリも造ることが可能です(笑)。1件でもそれをやると我々のアペラシオンは崩壊します。」
家内「あなたの畑はI.G.P.でしたよね。フォジェレールA.O.C.の近くですよね。」
ルイさん「父の代にA.O.C.に入るかどうか近隣みんなで討議した折り、自由にやれるコート・ド・トングV.D.P.を選択しました。私の母はスペイン人ですし、我々のコミュニティは違う文化が共生することを誇りにしています。それこそが自由だという考え方なのです。」
こんなに自立した考えの26才は日本にはいないかも。少なくとも我が家の娘は負けている(笑)。
私「トスカーナでもカベルネ・フランは成功していますから、南フランスで成功しないはずがない(笑)!あなたは実証してくれました。」
インポーターさん「こんどカベルネ・フラン100%のワインがリリース予定なんですよ(笑)。」
家内・私「おー!(狂喜乱舞) 楽しみですね!」
私「あと余計なことですが、グルナッシュをクラシックなブルゴーニュみたいに造りませんか?色が薄くて旨いスタイルのワインです。南フランスでは、私の知ってる限り1人しかそんなワインは造っていません。スターになれますよ(笑)。」
ルイさん「誰ですか?たしかに南フランスだとフルボディになりがちですよね。うーん。グルナッシュはチェリーの香りと後味がチョコレート。面白いかもしれません。」
私「みんな濃いだけのワインを飽き始めてます。是非考えてみてくださいね。」


※後日談ですが、ルイさんはお父さんの早い急逝により『一日一生』の意を強めたようです。健康に注意してこのまま伸びれば将来大輪の花を咲かせるに違いありません。
楽しみな大器です(笑)。
大成した暁には『日本のワインの両親』を勝手に名のります(笑)。
頑張れ!
ルイさん!

2014年5月
社団法人 日本ソムリエ協会認定 ソムリエ
岡本利秋


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