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ワインの知識・ワイン辞典

 ヴァン・ド・ペイ新たな流れ

―オークチップの使用とテロワールの揺らぎ― 

2006年から2007年にかけて新たなヴァン・ド・ペイが新設されました。これがちょっと気になる新たな法規定で心配していました。良くも悪くもなる可能性がありました。ただ出来たワインを実際に飲んでみないことには、判断つきませんからいままでホームページには取り上げませんでした。ここのところ実際に市場で見かけることが増えてきましたので、問題児?についてすこしチェックしてみます(笑)。

まずボルドーで新設されたヴァン・ド・ペイ・ド・アトランティックです。2006年10月18日の政令で交付され2006年ヴィンテージより適用されました。
実はボルドーにはヴァン・ド・ペイがありませんでした。AOCの上級ワインしか生産されない地域だったのです。この新たなヴァン・ド・ペイはシャラント県、シャラント・マリティム県、ドルトーニュ県、ジロンド県、ロット・エ・ガロンヌ県の一部をエリアにしています。AOCのワインと比べるとシャトーは使用出来ないらしいですが、品種名やヴィンテージも記載できます。ただ収穫量の規制はAOCより緩く、安く多くのワインを造ることが可能です。生産地域もいわゆるボルドーをはるかに凌ぐ『拡大ボルドー』と考えて良いですね。
あと一番気になるのは、オーク・チップの使用を認めたところです。基本的にワインは木樽で熟成させることで複雑さや風味が増しますが、オーストラリアなどのニューワールドでは樫の木屑をステンレスタンクに入れることで木樽の風味を付ける荒技を使います。もちろん安価なワイン用の裏技です。この一工夫で濃いめのワインにゴージャスさが加わり、販売増大に寄与しています。ニューワールドでは普通に造れば、そこそこ濃い果汁が容易に確保できます。そのワインをわざわざ木樽に入れる事なく短期間に樽風味がタダみたいな値段で付きますから、経済効率は抜群です(笑)。熟成とは無縁のワインですからなせる技であり、発想でもあります。(自分達のワインが熟成しないことを知っているのです。)

ヴァン・ド・ペイ・ド・ヴィニョーブル・ド・フランス この新たなヴァン・ド・ペイは2007年2月28日に交付されました。
これはいままで認められなかったヴァン・ド・ペイ同士のブレンドを認めたカテゴリーです。どういうことかというと、県単位で指定しているディパートメントのヴァン・ド・ペイと狭い地域を指定するゾーンのヴァン・ド・ペイのブレンドを認めています。実際はもっとも広い地域を指定するレジョナルのヴァン・ド・ペイもブレンドが可能になる抜け道がありますから、ヴァン・ド・ペイ同士のブレンドが全面的に可能になりました。高い産地のワインに安い産地のワインを加えてブレンドできる訳です。(フランス国内ではブドウの買い取り価格の格差が問題になっており、ブドウ畑の減反が社会問題になっています。)
これにより生産効率を上げ、『フランスの地酒』という一大ブランドをつくった訳です。ただし、ヴァン・ド・ペイの地域に根付いた地酒とは異なった味わいのワインをつくることとなります。テロワールを越えたワイン造りですから、いままでフランスが固執していたテロワールを放棄したことにもなります。また例外的にいままで産地指定されていないところでもヴァン・ド・ペイのレギュレーションを満たせば生産が可能になるそうです。なんでもヴァン・ド・ペイになる打ち出の小槌でもあります。
まさにニューワールドの経済性の良さに、フランスもなりふり構わず追随対抗することになったようです。プライドの高いフランス人は『安酒のことだから、テロワールの重要性とは関係ないよ。』と強がるかも知れませんが、ニューワールドのワイン造りと高い品種に対抗するには、この方法を取らざるを得なかったのですね。
背に腹は代えられず、ついに『パンドラの箱』を開けてしまいました。
あとこの新たなヴァン・ド・ペイはオークチップの使用が認められています。フランスはニューワールドと同じ土俵に立ち、本気で巻き返すつもりです。この新しい試みが全体の品質向上につながればよいのですが、たんに経済性の効率化だけに終わるとフランスのヴァン・ド・ペイは消滅することになりかねませんし、ひいては『テロワール』の思想を放棄することにつながらなければと心配しています。

またオークチップの件ですが、これは2006年10月11日付のEU規則でEUのワイン産地で認められたものです。ニューワールドの安価なワインはEU全体の問題なのです。
ただし、オークチップを使用したワインは例えオーク樽を併用していても、木樽の使用をラベルに記載できないと規制されます。
このながれに並行してフランスではAOCのワインにはオークチップの使用を禁止する決議がされました。
うーん。実際我々が欲する情報はオークチップの使用の明記なのです。
例えば新しいバリック(225リットルワインが入る木樽)を調達するには10万円かかるとするとバリックから750ml入りの瓶詰めワインが300本できますから100000÷300=333.333…ですから1本のワインに約333円のコストが必要になります。さらには熟成には時間がかかりますからその期間の金利もコストになります。本当に木樽熟成したワインは高価なものになります。ところが巧妙なオークチップの使い方で誤魔化せれば、利幅は大きくなります。オークチップの使用を伏せたままコマーシャルでブランドを巧みに宣伝できればビッグビジネスも可能です。もうやってるところありますね(笑)。また明らかな詐称をする生産者もいますね。ニューワールドでもオークチップの規制をするか、輸出する際に報告表示を義務付ける必要があるかと思います。ワイン輸入国の日本では、消費者保護の観点から、輸入時にこのようなルールを作っても良いと思います。日本はワイン消費国としても成熟してますし、必要な措置だと思います。消費者庁に期待するしかありません。

また、話は飛びますが、温暖化防止の世界潮流とオークチップの有用性が誇張容認されますと、将来木樽熟成が禁止になるかも?SFみたいなことに将来なるかも?まんざら有り得ないとは言い切れないですね。
そうなったらワイン生産地図も今とは変わってくるでしょうし、味わいも変わってしまうかも?

先のことを心配するとキリがないですね(笑)。
悪い癖です(笑)。

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